ニコ動版



いわゆる「高画質版」と呼ばれているバージョンで、最大の特徴は今までの12話を置き去りにするほどの画質である。「高画質版」と呼ばれるに相応しいものであるが、幾つか問題・疑問もあり、当ページでは「ニコ動版」と呼称する。

2025年12月29日の夕方に投稿されたX(旧ツイッター)のポストが切欠の一つだった。そのポストにはニコ動へのリンクと12話の画像が添えられていた。そこからニコニコ動画に高画質な12話が投稿されていることが広く知れ渡る。特に深夜〜早朝が盛り上がり、ヤフーにも話題になっているとして取り上げられたほどだった。しかし、30日午前、確認できた時間では10:30頃には円谷プロからの申し立てにより削除される。ここからは「速攻削除された」などの感想が増えるが、同時に転載先のポストも出始めた。結局、この騒動は―年末という事もあろうが―年明けの話に掻き消され、徐々に沈静化していった。その後、削除されず長い事視聴出来ていた通常版なども削除され、26年1月現在では国内での動画投稿サイトで視聴するのは難しくなっている。ただ、海外の投稿サイトでは多くのコピーが出回っており、全く見れないという訳ではない。そして、大元の投稿ログを見てみると、12月13日に投稿されたのが確認できる。29日に拡散されるまで2週間以上ニコ動に存在していたのだ。この間に拡散が起きなかったのは「高画質」などのタグをつけることがなかったので、目にする人が少なかった事とXなどで報告事例が無かったためである。ニコニコ動画自体もYouTubeに押されてユーザーが“常連”ばかりになり、先の「カドカワハッキング騒動」も相まって減らした事もあって、全体的に注目されにくかった面もあるだろう。多少「高画質版を手に入れた」という投稿などもあったらしいが、具体的な場所など無かったために「程度の良い通常版の事か?」と思われていたようである。
ニコニコ動画ログ1 ニコニコ動画ログ2 削除お知らせ
(ニコニコ動画の投稿ログ、削除の理由告知。13日に投稿され、29日の夜から閲覧数が伸びているのが分かる)

また、SNSなどの盛り上がりを受けて、ヤフーの「リアルタイム検索-SNSのバズまとめ」でも取り上げられた。
ヤフーニュース
(ヤフーSNSのバズまとめ)

特徴は何と言ってもその「画質」である。デジタルならではのシャープさ、色彩の鮮やかさは今までのものと比にならない。TNT版も通常版に比べれば鮮やかであったが、画質としてはアナログのやや滲みがあり、ニコ動版の衝撃は一段も二段も上であった。そして、意外にも完全版として初めてのバージョンでもある。通常版はAパートラストがカットされ、ドラキュラ版は通常版とのニコイチ状態、TNT版は幾つかのシーンがカットされており、50年以上の時を経てようやく我々の前に現れたのだ。他に目につく特徴としては、序盤の緑がかった研究室のシーンだ。通常版と比べて、明らかに色合いが違う。ただ、識者によれば「以前のバージョンでは研究室と他の部分で色の褪せ方が違う。他は赤っぽくなっているのに、ここだけ普通という…元が緑だったので、赤が足されて普通になったような感じがある」という事である。また別の話では「ウルトラマン大事典のフィルムストーリーの画像に使用されていたフィルムも褪色していたため、映像処理関係の知人に色補正してもらったところ、研究室のシーンは緑色が出てきた」とも。TNT版は色彩に関しては良かったので、カットされていなければ、研究室のシーンが本来どのような色合いだったのか分かった可能性が高いだけに残念だ。
ニコ動版研究室 通常版研究室
(ニコ動版と通常版の比較。明らかに色の違いが見て取れる)

ウルトラマン大事典該当箇所調整版 ウルトラマン大事典該当箇所オリジナル
(ウルトラマン大事典の研究室部分。左が調整後。ウルトラマン大事典に使われたフィルムは通常版のテレシネ元であり、ほぼ同時期に出された84年の同人誌「被爆(スペル)星人の逆襲」ではドラキュラ版のテレシネ元のAパートのみのフィルムが既に赤くなっていることが記されている。識者の「通常版の元となったフィルムでも褪色があった」というのも頷ける話だ。)

また、幾つかのシーンでフィルムのシミが見て取れる。拡散初期に「AIで補正・修正したか?」と言われたが、そうであればこのようなシミを作る必要はないだろうから、やはりデジタル化されたものが流出したと考える。
フィルムシミ1 フィルムシミ2 フィルムシミ3
(残っているフィルムのシミ・ゴミ。後半の戦闘シーンに良く分かる箇所が集中している)

余談になるが、騒動初期にスタッフクレジットの字体(フォント)が違うのでは?という話があったが、比較してみると同じであることが分かる。デジタル化でシャープになった分、今までとは違う印象を受けたのだろう。この話題になった比較画像を見てみると他の話数と比較していたようだ。この頃の字体はフォント専門の人が手書きしており、話数ごとに違いが出るのは当然だったのだ。
ニコ動スタッフクレジット 上映版スタッフクレジット 通常版スタッフクレジット
(ニコ動版、上映版、通常版の比較。太さの差があるものの、これはアナログの滲みでぼやけて太く見えているだけである)

他に前出の識者は「スプライス(フィルムの繋ぎ目)も消されているが、前のコマをダブらせて消しているのがバレバレで4Kレストアのアプローチとは違う」と話していたことからも上記のシミといい「商品化」する為のレストア作業は左程なされていない事が伺える。音声に関しても「ズレている」「オリジナルにない効果音がある」という話だ。DVDで出されたデジタルウルトラシリーズでは擬似ステレオ化し効果音が追加されているので、このデジタルリマスター時の素材を再びモノラル化して使われているのかもしれない。音ズレもそれに起因している可能性があるだろう。これらの事からニコ動版は「素材」であり、真の高画質版は画面が修復されるなどした「レストア作業済みの円谷公式」を待つしかないのかもしれない。

流出経緯に関しても通常版同様に「円谷周辺からなんだろうけど…」となる可能性は高いだろう。ただ、2000年代初期に行われたDVD用デジタルリマスターはSD画質であり、今回のものはブルーレイ時のHDリマスター2.0か、それより前の放送用HDリマスター時のものと思われる。そこから既に10年近くが経過しようとしているが、犯人捜しを円谷プロがしているような話が聞こえてくれば、円谷プロがデジタル化を行い、それが流出した証拠と言えるだろう。
その場合でも通常版やドラキュラ版同様に初期は限られた範囲での少しずつの広まりであっただろうが、決定的に違ったのは広範囲への拡散力である。通常版は極一部のマニア間で、ドラキュラ・TNT版はヤフオク・ファイル交換ソフトでその裾野を大きく広げたが、ニコ動版は極めて短期間に万単位で広がった。 皮肉な話ではあるが、ニコ動版は画質・拡散力共に既存のバージョンを越える「核兵器級」の代物と言え、12話史(なんてものがあればだが)に大きすぎる足跡を残したとして記憶されるだろう。






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