国内版
1969年7月26日公開、89分。撮影は英語で行われた為、日本語吹き替えが行われている。声優は以下の通り(日本人俳優は自らが吹き替えした)
マッケンジー艦長:納谷悟朗 ロートン記者:村越伊知郎 マリク:冨田耕生 ルクレシア(愛人):平井道子 アン・バートン(女医師):翠準子
海外版より9分短いが、シーン丸ごとのカットは少ない為、それほど短い印象は受けない。寧ろ緯度0のシーンや大ネズミ軍団のシーンは海外版よりある為に国内版の方が長く感じる。
短いながらもシーンを収録している事とかなり細かいショット事のカットがそう見させるのではないだろうか。
以下が国内版のみのシーンである(左が開始、右のシーンまで)。

(左の船長退室から右の学者と記者が会話しているシーンまで。海外版では記者がダイヤを詰めるシーンで終了している)

(大ネズミの追撃から5人の出発まで。海外版は追撃直前に5人が飛んで沼を渡り切ったところまで)
また、ワンシーン程度の海外版にないシーンが幾つかある。

(マリクを呼ぶ愛人、緯度0の部屋に向かう途中、英字新聞。この他にも緯度0の風景シーン等が無い。マリクを呼ぶ愛人のシーンの代わりにマリクが振り返り階段を登るシーンが海外版にはある)
ラストもEND″から終″に変更されている。

今回検証したものはかつて映画館での上映に使用されていたもので、フィルム破損などによるカットが存在するようだ。、具体的にそれが最も判るのは海底を転がる潜航艇のシーンで、
コマが飛んでいるのがはっきりと見えた。意図的にカットしたとは考えにくい部分であり(事実、テレビ版ではカットされていない)、物理的に問題が生じて止むを得ずカットしたと考えるのが妥当であろう。
また艦長が記者と博士に司令室で会い、握手をするシーンもやや不自然な繋ぎになっている。チャンピオンまつり版・テレビ版では海外版同様の長さであり、キチンとアフレコされている。
このシーンも物理的な問題によるカットではないかと推測する。マリクの手術室である檻に入った鷲のシーンもチャンピオンまつり版・テレビ版で確認出来るので、物理的な問題だろう。するとかなり問題を抱えているフィルムといえる。
事実、公式のランニングタイムが89分であるのに実際のフィルムは88分10秒程度しかないのだ。多少の揺れを考慮しても「89分」とするには少ないと思える。
二十数年以上もかけられれば、傷が出てくるのも仕方ないのだろうか……。ただ、2001年にニュープリントされているので、ニュープリント版と比較する事でよりはっきりした事が判るだろう。残念ながら、
ニュープリントした直後のラピュタ阿佐ヶ谷で上映されて以後映画館にかかっていないようであり、早く比較出来る機会が到来して欲しいものである。
*04/08/29に浅草東宝にて上映されたようである。ニュープリント版かは不明
しかし、緯度0夜景は不思議である。海外版では記者がダイヤを詰めた所の直後で次のシーンがマリクが悪態をつくところである。
これに対し、国内版は田代博士が宿舎で外を眺めている所で緯度0夜景が短く挿入されている。そして、マリクのシーン直前にはモニターに映っている緯度0夜景がくるのだ。
そして、海外版の緯度0夜景は点灯しているビルの灯りが徐々に消えていくところがあるが、国内版は消えて終わった所からである。
本来は海外版の緯度0夜景であり、その直後にモニターに映る緯度0夜景がくるのかもしれない。
緯度0夜景→灯りが消えていく→灯りが消えた緯度0夜景→モニターに映る緯度0夜景
こうなれば緯度0夜景からモニターに映る緯度0が被さる形で切り替わり、モニターを見ながらマリクが悪態をつくという流れになり、この方が自然に思える。
その為に国内版の方が本来の形である可能性を否定しないが、それよりは国内版が緯度0夜景を短くした上で移動した可能性が高いと判断する。
これは全長版に密接するのだが、海外版をベースと考えるからである。シーン順序が同じ箇所であれば長く収録されている方が本来の形であるはず。とすれば、細かいカットを沢山行っている国内版の方が順序に関しても入れ替えを行っていると
みて間違いないと思うのだが……。

(左:緯度0夜景、中央:灯りが消えた緯度0夜景、右:モニターに映る緯度0夜景。本来はこのような流れであると推察する。
暗くなりすぎているが、左の夜景から徐々に灯りが消えていく。中央と比較―特に画面中央やや右寄りと画面左端―すると判る。国内版は真ん中の灯りが消えた状態の夜景が挿入されている。テレビ版はトリミングされているが、タイミングなどから
モニターに映る緯度0夜景である)
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