ロメロ版
北米版・米国劇場公開版・日本初ビデオ版とも呼称される。前作「NIGHT OF THE LIVING DEAD」のようなドキュメンタリータッチであり、音楽もクラシカルなものが多用されている。
ただ、厳密に言えば劇場公開版に多少手を加えたビデオリリース版のようである。
日本では85年にビデオリリースされる際に採用されたが、ファンには戸惑いを与えた。それまで親しんだ「ゾンビ」とは全くといっていいほど違うものだったからである。
その大部分はゴブリンの音楽が極一部で使用されているに留まった事であるが、見た事のないシーンが多く収録されている事とロメロ監督の「意図したバージョン」という
事で落胆しつつも歓迎されたようだ。逆に日本版の地上波放送も少なく、94年のアルジェント版公開まで長くレンタルビデオで見られる唯一のものだったので
こちらに親しみを感じている人も多い模様。尚、正規版発売前に独自のテロップを入れた海賊版が出回っていたという。
以下に各バージョンのタイムテーブル表を載せる。素材の都合上で誤差があるが、一つの目安になると思う。
| DC版 | ロメロ版 | アルジェント版 | サスペリア版 |
放送局 | 06:09(06:09) | 05:43(05:43) | 06:30(06:30) | 06:30(06:30) |
アパート | 11:40(17:49) | 10:39(16:22) | 12:00(18:30) | 10:43(17:13) |
巡視艇基地 | 05:53(23:42) | 02:07(18:29) | 01:50(20:20) | 01:38(18:51) |
ゾンビ狩り | 02:18(26:00) | 02:17(20:46) | 02:45(23:05) | ― |
給油基地 | 06:42(32:42) | 06:23(27:09) | 03:55(27:00) | 00:47(19:38) |
モール到着 | 29:18(62:00) | 27:45(54:54) | 26:15(53:15) | 23:38(43:16) |
トラック搬送 | 15:53(77:53) | 14:41(69:35) | 12:45(66:00) | 10:30(53:46) |
ゾンビ掃討 | 09:27(87:20) | 09:20(78:55) | 08:26(74:26) | 07:22(61:08) |
フランつわりまで | 02:56(90:16) | 02:44(81:39) | 03:27(77:53) | 03:29(64:37) |
デパートでの生活 | 05:26(95:42) | 05:14(86:53) | 04:49(82:43) | ― |
ロジャー死亡後まで | 13:42(109:24) | 12:26(99:19) | 09:00(91:43) | 07:44(72:21) |
シャッターを降ろす所まで | 04:47(114:11) | 04:39(103:58) | 05:04(96:47) | 02:55(75:16) |
戦闘 | 16:01(130:12) | 13:45(117:43) | 15:24(112:11) | 12:26(87:42) |
脱出 | 07:13(137:25) | 07:12(124:55) | 05:03(117:14) | 04:51(92:33) |
エンドロール | 01:49(139:14) | 01:57(126:52) | 02:47(120:01) | ― |
公式尺 | 139分 | 127分 | 119分 | |
*()内はトータル時間
アルジェント版と比較して、「給油基地」「トラック搬送」「脱出」のシーンが長い。「給油基地」ではゾンビの頭部プロペラ切断シーンがあり、
「トラック搬送」では1回分多い(アルジェント版では最初の一回目がカットされている)。「脱出」のシーンではゾンビが手に持っているライフルを
交換するシーンがある。

(巡視艇基地での警官隊とのやり取り、頭部プロペラ切断、ゾンビ射殺。巡視艇基地のシーンは警官隊が何時からいたのか判らない感じになっている。ロジャーに射殺されるこのゾンビはアルジェント版では放置されてしまっている)

(トラック搬送1回目、エレベーターでの移動、銃取替え。エレベーター移動はゾンビ掃討時に二階から一階へ店内を移動するときのもの。スティーブンとフランはエスカレーターの所を
移動するが、ロジャーはケガしている為ピーターと共にエレベーターでの移動。エレベーター内の会話が遣る瀬無さを感じさせる)
この他にもロジャー死亡後の生活シーンがロメロ版にあるが、アルジェント版はフランの化粧シーン以降が無くなっている。トラックを退かすシーンはアルジェント版にはないシーンが
僅かに入っている。
エンドロールはゾンビが徘徊するショッピングモールをバックにカットIN、カットOUT方式。音楽はほのぼのとしたものであるが、それが不気味さ、無常さを
増幅させ、最後の鐘の音は「終末」を感じさせる。尚、DC版よりも長いのはラストのビデオリリース会社の止めがある為。

(エンドロール自体の時間はDC版と同じ長さだが、左のリリース画面分DC版より長くなっている)
音楽に関してはゴブリンの曲がかなり削減されている。以下が使用箇所と使用曲である。
シーン | タイムテーブル | 使用時間 | 使用曲 |
放送局 | ― | 02:34 | メインテーマ |
アパート地下 | 15:05-15:43 | 00:38 | メインテーマ |
ゾンビ狩り | 18:30-19:40 | 01:10 | メインテーマ |
モール到着 | 27:10-29:32 | 02:20 | メインテーマ |
スティーブンVSゾンビ | 41:50-42:02 | 00:12 | メインテーマ |
強行突破 | 42:38-43:59 | 01:11 | ゾンビ |
トラック搬送1回目 | 59:05-61:42 | 02:37 | LA CACCIA |
トラック搬送2回目 | 64:45-66:42 | 01:57 | メインテーマ |
ゾンビ掃討 | 71:30-72:38 | 01:08 | LA CACCIA |
ゾンビ掃討(続き) | 72:57-73:03 | 00:06 | LA CACCIA |
自動車爆走 | 75:38-77:10 | 01:32 | LA CACCIA |
シャッターを降ろす所まで | 103:43-104:14 | 00:31 | メインテーマ |
暴走族侵攻 | 104:19-106:33 | 02:14 | ゾンビ |
暴走族VSゾンビ | 108:13-110:18 | 02:05 | メインテーマ |
暗闇 | 110:47-111:13 | 00:26 | メインテーマ |
*放送局のシーンは3つに分かれている。タイムテーブルは01:40-02:35、03:10-03:59、04:13-05:43である。
ゾンビ掃討(続き)は間に挟まれている移動シーンを跨いで続いているもの。
トータルで20分30秒程度使われているが、メインテーマが9回、LA CACCIA(追跡)は4回、ゾンビを2回と極端に偏っている。差し替えられた音楽は「怪奇映画」と呼ぶに相応しい古めの音楽が使用されており、アルジェント版とは全く違う感じに仕上がっている。とはいえ、
暴走族侵攻シーンでも使われており、悪くない仕上りである。尚、OPからかかるメインテーマは20周年記念版のCDに収録されている別テイクのもの。
特徴として忘れてならないのが「ゾンビング・サウンド」である。ゾンビング・サウンド……さも凄そうな名前であるが、内容は「モノラルの擬似ステレオ化」
の事。ビデオ化の際にモノラルの音声を電気的にステレオ化したのだ。その事を「ゾンビング・サウンド」と呼称した。まぁ、モノラルよりは迫力が出るだろうが……。
一応、実際にはステレオ素材があると言われているものの、今の所「ステレオ」として収録されているものは電気的に変換したものしかないようだ。
因みに「ゾンビング・サウンド」は続編の「死霊のえじき」でも継承されているが……こちらは名前を使っただけのよう(笑)
そして、このロメロ版では1箇所編集ミスがある。ビデオのみかもしれないが、アパートのシーンから巡視艇基地へ移行時に余計なシーンが残ってしまっている。
ピーターの拳銃発射→無線技師の死体、とピーターの弾があたかも無線技師を殺した感じになっているのだが、その間にあるスティーブンのヘリ着陸シーンが
一瞬残っている。中々の演出だっただけに、ちょっとガッカリである。

(DVDでもこのシーンはこのまま収録されていた……ひょっとしてワザと?(^^A)
ビデオではラストにロメロ監督作品の予告編集が収録されている。「ゾンビ」「NOTLD」「マーティン」「ザ・クレイジーズ」の4本であるが、
「ゾンビ」はイタリア版が収録されている。

(NOTLD、マーティン、クレイジーズの予告。「なーいと……おぶざ りびんぐでーっ」と繰り返すNOTLDの予告が印象的)

(イタリア版のゾンビ予告。画面が左に寄り過ぎている)
長らく再販の無かったロメロ版であるが、04年7月にDVDがリリースされた。リメイク版が公開された事もあってのリリースだろうが……ついでに廃盤となっている
DC・アルジェント版も再版して欲しかった……。それとも今年公開の「LAND OF THE DEAD」に合わせてBOXを出してくれると期待するばかりだ。(07年暮に再版されました!(^^)// 次は日本語吹替入りのBOX……いつ出るのかな……)

(04リメイク版公開時の特番でのDVDリリース紹介。北米版トレーラーを使用しているようだが、アルジェントが製作にクレジットされている)
それはさておき、DVD版はDC版同様にワイド仕様でのリリースだが、DC版と比べて左右の広がりが大きい。また、上下のカットもDC版よりも少ない。
画質も段違いで、最強の画質″と言われているアンカーベイと同じマスターを使用しているとの事。とはいえ、映像特典が広告では「予告編他」となっているのが結局
予告編だけだったり、コメンタリーなどもない等々と不満が多いのも事実。この後に出た「死霊のえじき」は中々の充実ぶりだったのだが……。



(左からロメロDVD版、DC版ワイド仕様、ロメロビデオ版。一番上のクレジット部分のみロメロビデオ版には字幕が無い為、DC版LDを使用。左右の広がりや上下のカット具合を見比べて頂きたい)

(比較用フルフレーム版。特に上下の広がりを見比べて頂きたい)
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