コレクターズカット特別編集版
ロメロ版、アルジェント版、ディレクターズカット版を一つにした所謂「私家版」。パッケージなども良く出来ているのだが、惜しむらくは「ゾンビ」のカタカナタイトル表記が少ない事か。(※個人の感想です)
2000年代半ばから後半にかけてヤフオクで細々と売られてたが、海賊版ということで10年代には見られなくなっていった。
ベースはアンカーベイの米国劇場公開版。ディレクターズカット版、アルジェント版は画質がイマイチという事で北米版が選ばれたようだ。また、全てのカットが入ってるわけではない。音楽などの繋がりの関係で入れられなかった部分も多々ある。それについては、特典ディスクの制作ノートに理由・箇所が記載されている。画質優先の為DVD2枚に分割されていて、ディスク1が82分、ディスク2が67分の計149分。エンドロールは北米版。特筆すべきは、音声である。作成者のコメントがメインで流れ、通常の英語音声が副音声。「主音声/英語 副音声/日本語」だとより製品さが出るので、「普通、逆じゃね?」と思ってしまったものだ(笑)
日本語字幕は既存の訳の流用ではなく、オリジナルでつけたもの。これまでの字幕と「映画で学ぶ英会話6ゾンビ」を参考にしたという。「映画で学ぶ英会話6ゾンビ」はPS版と同じサクセスが出しており、Windows95/98用ソフト。字幕の特徴としては原語よりであり、既存の字幕ではスルーされているセリフにも字幕がある。

ソフトではスルーされている字幕の一例。直訳では「なんだこれは?ニュース番組か、それともアメフトの中継か?あのバカを放送から外せ、あ!?」と長くなるが、既存の字幕では右のように「放送の邪魔をさせるな」の一言だけで終わる。

こちらは直前のシーンが「缶切りあるかい?」「ないわ」で、既存の字幕では「任せておけ」「お願いね」等と訳されている。
編集に関しては、画質は素材の関係で仕方ないものの、音楽は気になるような所はない。制作ノートに細かく書かれており、非常に気を使って編集作業を行った事がわかる。また先ほど書いた通り、入れられなかった箇所なども詳細に載せている。その殆どは音楽の繋がりを考えてのものであり、拘りを感じる。個人の好みによって素材をチョイスして編集する…その結果、OPやエンディングがロメロ版でアパート突入シーンでゴブリンの「ゾンビ」が鳴り響く「ぼくのかんがえたさいこうの『ゾンビ』」が実現した。残念なのはディスク2枚に分割されてる事だ。当時は2層DVD−Rも一般的とは言えず、分割必須だったとはいえ、より容量の大きいBDが一般的になった今ならば、1枚に収められた事だろう。
特典ディスクには上記の制作ノートの他、ドイツ全長版、サスペリア版、日本劇場初公開版(ダイジェスト)が収録されている。容量・素材自体の関係上画質はあまりよろしくはないが、どれも貴重な映像である事に変わりはない。また、隠しファイルとして「メイキングThe dead will walk」が入っている。これはアンカーベイ版の特典でロメロなどへのインタビュー。初公開時のパンフレットも画像ファイルで収録されており、充実した特典内容となっている。

(制作ノート。右は使用したシーンがどのバージョンかを指しており、青がディレクターズカット、赤がアルジェント、黄色が北米版)
(特典ディスクのメニュー)
最後にドイツ全長版に触れておこう。元祖私家版、といったもので、ファイナルカット版・コンプリートカット版・レッドエディション版など様々な呼び名がある。元々ドイツ語吹き替えのみで、ファイナルカット版と呼ばれていた。コンプリートカット版は後に作成された英語版とドイツ語吹き替え版の2種収録版を指してるようだ。レッドエディションは発売している会社名からとか…。
アルジェント版をベースにほぼ全てのカットを網羅しており、156分。正に「全長版」と呼ぶに相応しいものだが、「兎に角、全カットを入れる」を命題にしており、音楽の繋がり・画質の違いなどは気にしない。中盤のダミーの壁を作っている時にスティーブンがフランを探しに行く所はロメロ版とアルジェント版でテイクが違うが、両方とも収録しており同じようなシーンを2度繰り返す。ロメロ版→フランがトイレへ行く→アルジェント版の流れ。しかし、微妙に上手く作っており、「ロメロ版でスティーブンが何処かへ行く→フランがトイレへ→スティーブンがペンキを持ってきた」っぽく見え……なくもない(笑)
それにしてもエンディングである。ラストの屋上シーンではサラトゾムが流れているので黒バックにエンドロールが流れるアルジェント版かと思いきや、ショッピングモールから始まるロメロ版。で、音楽はそのままサラトゾム。初めて見た時は爆笑してしまった。「いや、これはないだろう」と…。兎に角、合っていないのだ。やはりロメロ版のエンドロールには軽快で呑気な「THE GONK」が合ってる。それとも、刷り込みによってこう思ってるだけで意外と合ってるのか…?ロメロ版にある最後の鐘も収録されており、サラトゾムのフェードアウトからの鐘の音というのも、いやはや…。何にしても特に笑うシーンがある訳でもないエンドロールで爆笑という体験は初めてだった。なお、製作45周年ブルーレイの擬似全長版でも同じ事をしていた……「スティングレイよ、お前もか」である。
だが、ドイツ語全長版最大の謎は、その販売方法だ。DVDだけでなく、今ではBDも出ている。「ASTRO」「XT VIDEO」という会社からも発売されているのだが、普通に販売しており海賊版を売っているようには思えない。一体、どんな権利関係になっているのだろうか。日本の45周年擬似全長版は半年で販売終了となったのだが…昔の契約で販売まで可能な状態になっているのか、ドイツには甘いのか…。中々に不思議なバージョンと言えよう。
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