日本劇場初公開版



記念すべき日本で初めて公開されたバージョン。しかし、初公開版から改変されている事に何とも因縁めいたものを感じるのは 私だけであろうか……。
検証に使用したものは劇場で上映されてたものをビデオで録画した物である。その為、画面はフリッカーというちらつきが常時ある状態だ。

日本劇場初公開版はアルジェント版をベースに追加・カット・修正を加えたもので、大きな変更点は3つ。
1・冒頭の惑星爆発シーン
2・シーンカット
3・ゴアシーンの処理
である。

1の惑星爆発シーンであるが、「ゾンビ」とカタカナのタイトルが出た後、惑星が爆発する。この惑星爆発は1回だけで、地上波ほど 派手さは感じない。その後、タイプライターの打音と共に死者復活の理由が書かれる。しかも英語で打ち、それを翻訳するという非常に 凝った事をしている。宛もオリジナルからあったかのように…………(笑)
理由こじつけ1 理由こじつけ2 理由こじつけ3
余談になるが、04年に公開されたリメイクの「ドーン オブ ザ デッド」でも 映画が始まる前にカタカナの「ドーン オブ ザ デッド」が下からせり上がってくるオリジナルのタイトルをつけている。場内では失笑 されていたようだが、個人的には非常に嬉しかった。是非、DVDでも収録して欲しかったが……。
だが、ここで一つの疑問が持ち上がる。一体、日本ヘラルドはどこから「ゾンビ」というタイトルを持ってきたかだ。
確かにアルジェント版をベースにしてあるのだから「ゾンビ」というタイトルを持ってくるのは判る。しかし、日本劇場初公開版のOPは ロメロ版になっており、「ZOMBIE」の文字は存在しない。劇中でも「ゾンビ」という単語は1回しか出てこない。
担当者が劇中の「ゾンビ」という単語に強いインパクトや何かを感じ、それをタイトルに採用したなら判らないでもないが、「死霊のえじき」 のようなタイトルをつけそうなものである。だがしかし、「イタリアから輸入」などと言っている事から当然原題の「DAWN of the  DEAD」よりも「ZOMBIE」の方を意識していたと考えるのが妥当だ。だとすると、何故OPのみロメロ版なのだろうか?しかも 画のみがロメロ版で音楽はアルジェント版。まさか、日本のみの特別仕様を送ってきたとも思えない。
まぁ、どんな理由があったのかは当事者でないと判らないだろうが……。
追記:こちらにてOPに関して考察を行っている。参照されたい。

シーンカットは以下の通りである。
*タイムテーブルはアルジェント版でのもの。
シーンタイムテーブルカット時間
ヘリ内での会話○20:07-20:2414秒
モール店内※36:51-36:521秒弱
ヘリローター12:061秒弱
ロジャー、ゾンビ射撃後※01:00:07-01:00:4740秒
壁作成○01:16:40-1:17:591分19秒
生活シーン101:19:09-01:22:353分26秒
生活シーン201:31:09-01:31:4334秒
スティーブン移動※01:36:47-01:36:492秒
※のあるシーンは上映撮影版ではなかったものの、テレビ放映(サスペリア・再放送)版ではあるシーン。
○はソースは同じであるもののカットされているものがある。

この他にエンドロールもカットされたようだ。
追記:上映当時の35mmフィルムをテレシネしたイタリア語版でもエンドロールは無かった。上映当時のアルジェント版にはエンドロールが無く、日本劇場初公開版のみの処置ではなかったのかもしれない。そして、テレビ放映版ではラストがストップモーションになっており、劇場初公開版とは違う処理になっている。
生活シーン銀行 生活シーンゲーセン 死者が地上を歩く
(店内のゾンビを後片付けし冷蔵室へ入れた後の生活シーン)
テープセット 生活シーン化粧1 化粧2
(ピーターがテープを掛け、フランが化粧をしているシーン)

また、ビデオテープ入れ替えと思われるシーン欠落が2箇所ある。
・31:05-32:30(1分25秒)
・01:31:08-01:32:40(1分32秒)
入れ替え直前?1 入れ替え直後?1
入れ替え直前?2 入れ替え直後?2
(揺れと違い、画面の場所がワープする。また、カットするには妙なシーンでもある。しかし、時間的に微妙な所があり、テープ入れ替えとは断定出来ないが……。)
→どうやらビデオテープの入れ替えではなく、バッテリーの交換のようである。
その他、39分前後のスティーブンがモール内部に入る所あたりで前の席の頭が画面に少しかかり、「頭が入っちゃってる」という撮影者の声の後、画面が少し移動する等、時折撮影者の声が入る。

次にゴアシーンの処理。
シーンタイムテーブル処理テレビ放映
奥さんへ噛み付き20:07-20:24静止画同じ
手首切断01:12:13静止画シーンカット
ドライバー刺し36:51-36:52静止画同じ
ナタ引き抜き01:43:24スティーブンのシーンに差し替えシーンカット
ゾンビ首切り01:43:31静止画シーンカット
ゾンビ首切り01:43:38超トリミング同じ
ゾンビ殴り01:44:39静止画シーンカット
ゾンビ首刺し01:47:55静止画シーンカット
お食事シーン01:51:49-01:52:02進行式静止画シーンカット


静止画は動きが途中で止まるだけであり、音はそのまま。時間的には一緒である。ナタ引き抜きはこの直前のスティーブンのシーンに差し替えられた。
ナタ引き抜き差し替え1ナタ引き抜き差し替え2ナタ引き抜き差し替え3
ナタ引き抜き差し替え1ナタ引き抜き差し替え2ナタ引き抜き差し替え3
(下がオリジナルの流れ)

首切りの超トリミング処理はテレビ放映版でも見られる。お食事シーンの進行式静止画、というのは表現するのが難しい。動画と静止画が交互になり、 静止画も同じものではなく、少しずつ進行した画になっている、というものである。
理由こじつけ1 理由こじつけ2 理由こじつけ3
(左から首切り、殴り、首刺し)

超トリミングDC版 超トリミング日本劇場初公開版 超トリミングテレビ放映版
(テレビ放映に使われた素材が、日本劇場初公開版という事がわかる)

お食事シーン静止画1 お食事シーン動画 お食事シーン静止画2
(お食事シーン。左から静止画、動画、静止画。族が叫んだりする部分は動画で、腸を引きずり出すシーンが静止画になっている)

画面の比較。DC版ワイド仕様に近い。
画面比較1日本劇場初公開版 画面比較1DC版ワイド仕様 画面比較1アルジェント版
(左から日本劇場初公開版、DC版ワイド仕様、アルジェント版。スタンダードに比べ、上下が大きくカットされて左右に広がっている)

画面比較2日本劇場初公開版 画面比較2DC版ワイド仕様 画面比較2ロメロ版ワイド仕様
(左から日本劇場初公開版、DC版ワイド仕様、ロメロ版ワイド仕様。ロメロ版は上下左右とも一回り大きい。それでも上下の幅はスタンダードの方が大きい)

追記:惑星爆発シーンであるが長らく「メテオ」という映画の流用、或いは未使用シーンの流用とされてきた。2010年発売の新世紀完全版DVD-BOXの解説書にも記載されている。しかし、初出は不明で94年に発売されたLD・パーフェクトコレクションのライナーノーツには惑星爆発シーンの紹介はあるものの、メテオからという記載はない。
惑星爆発シーン1 惑星爆発シーン2 惑星爆発シーン3
(冒頭の惑星爆発シーン)

当該シーンは大きく3つに分けることが出来、1:四方八方に飛び散る光の粒子、2:煙を伴う爆発、3:画面中心からの閃光である。
動画サイトなどで確認出来る「メテオ」の爆発シーンは2に該当するだけで、しかも別物だという事が一目で分かる。
そして、最近言われているのが「デン・フィルム・エフェクト作製説」である。

最初は1の粒子飛散シーンが「宇宙からのメッセージ」のものではないかという指摘であった。これは、日本初公開復元版のパンフレットにも「1マニアの考察」的に書かれているものであるが、「宇宙からのメッセージ」にデン・フィルム・エフェクトは光学撮影として参加している。
その後、3の閃光シーンは「ウルトラマンタロウ」のタイトルコールに使われているものと指摘された。こちらは動画サイトなどで比較・検証されている。「ウルトラマンタロウ」にデン・フィルム・エフェクトの名前はないが、設立者である飯塚定雄が光学作画として参加している。
2の爆発シーンは「ズバリ、コレ!」というものが見つかっていないが、「宇宙からのメッセージ」に似たものがあるという指摘がある。
更に予告編で使用されている「マタンゴ」(東宝・63年公開)に登場するマタンゴ怪人の声。この作品にも飯塚定雄は参加しており、デン・フィルム・エフェクトは縁があるのだ…。

「デン・フィルム・エフェクトが手元にある素材を使って、あの惑星爆発シーンを作製した」という説は、確かに状況証拠でしかない。しかし、「メテオ」説もまた、確固たる証拠に基づいているわけではない事に留意されたい。






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